Twitterで見かける書籍の図解は著作権的に違法なのか。
Twitterでよく見かけるようになった書籍の図解。
フォロワー数の多いアカウントがやり始めたような印象があるが、図解なんかして法律的に問題無いのか。
問題あるとしたらどこに通報すればよいのか。
そこで今回はTwitterで見かける書籍の図解は著作権的に違法なのかについて解説する。
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Twitterで見かける書籍の図解は著作権的に違法なのかがわかる
「書籍の図解」とは
「書籍の図解」とは、名前の通り本を図で紹介する行為だ。
Twitterでよく見られる。
1ツイートに載せられる画像は4枚までなので、4枚の画像で書籍の内容を紹介している。
【忙しい人向け】「時間革命」を図解にしてみた結果とは…? pic.twitter.com/Ja4omrdwCz
— アフィラ | ビジネス書図解 (@afila_zukai) March 16, 2021
「超雑談力」を図解しました! pic.twitter.com/Ba41LDyiUT
— しまやす|図解デザイナー (@shi_ma_ya_su) March 15, 2021
”USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか? ”を図解しました。アイデアを思いつくヒントはこちら! pic.twitter.com/5mZtXU6TSh
— たべっち📘図解✖︎キャリア戦術 (@tabestation) March 15, 2021
「書籍の図解」の問題点
たったの4枚で書籍の内容を知ることができて便利、と思うかもしれないが図解という行為は問題点となる要因を抱えている。
問題点としては大きく以下の2点が挙げられる。
書籍の図解の問題点
書籍の図解は著作権法に違反していないか
書籍の図解は著作権法に違反していないかについてだが、著作権については著作権のページで調べるのが最も正確だろう。
まず著作権法でアウトなのが全文を丸々コピーする行為。
第二十一条から第二十三条に以下のようにある。
(複製権)
第二十一条 著作者は、その著作物を複製する権利を専有する。
(上演権及び演奏権)
第二十二条 著作者は、その著作物を、公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として(以下「公に」という。)上演し、又は演奏する権利を専有する。
(上映権)
第二十二条の二 著作者は、その著作物を公に上映する権利を専有する。
(公衆送信権等)
第二十三条 著作者は、その著作物について、公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)を行う権利を専有する。
2 著作者は、公衆送信されるその著作物を受信装置を用いて公に伝達する権利を専有する。
要は「コピーする権利も見せたり発信したりする権利も著作者にあるよ」ということだ。
では書籍の一部分だけ抜粋するのはどうだろうか。
一部分の利用は「引用」といい、引用については第三十二条に以下の記載がある。
(引用)
第三十二条 公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。
引用には目的が必要であり、一部分だけ切り取って載せるだけの転載では引用の目的とならないのでアウトである。
しかし本の図解は内容をそのまま載せているわけではない。
では要約はどんな扱いになるだろうか。
第二十七条では翻訳権や翻案件について以下のように記載されている。
(翻訳権、翻案権等)
第二十七条 著作者は、その著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する権利を専有する。
要約が翻訳権・翻案権に該当するならばかなり怪しいところである。
書籍の図解は「引用」かどうか
書籍の図解を翻訳件、翻案権で考えるとアウト寄りのグレーに見える。
では引用で考えたらどうなるか。
引用とした場合は完全にアウトである。
著作物を引用する場合はまず自分の文章を主、引用部分を従として扱う必要がある。
しかし書籍の図解は他人の著作物である「従」の部分しか無いのでアウトとなる。
さらに引用は改変禁止である。
図解の場合は要約しているので引用には当てはまらない。
書籍の掲載に関して専門家の意見
著作権法を見た感じでは、書籍の図解は引用の要件を満たしていない。
翻訳件、翻案権で考えるとアウト寄りのグレーに見える。
では専門家の意見はどうだろうか。
図解そのものについての意見は見つからなかったが、ブログに書籍を掲載することに関して弁護士ドットコムに質問が出ていた。
ここでは書籍で書かれている具体的な手法をブログに掲載してもよいかについて、質問者が以下のように質問している。
ネタバレは引用の要件ではないということは、著作権法32条の引用をきちんと順守すれば「具体的な方法」をそのままブログに掲載しても問題ないと解釈して良いということでしょうか?
それに対する回答が以下となる。
批評等の正当な理由があり,引用の要件を満たしていれば問題ありません。
しかしながら,本当に引用する必要があるのかという点については,十分に検討されることをおすすめします。
引用の場合はやはり「批評等の正当な理由があるかどうか」がポイントになってくるようだ。
書籍の図解の場合は批評のような「主」の文章は無いので、正当な理由は無いように思える。
権利者の許可が必要ではないのか
勝手にやると法的にアウトそうな書籍の図解。
では書籍の図解するとしたら権利者の許可が必要ではないのか。
まぁ必要だろう。
図解ではないが書籍の要約サイトに「flier(フライヤー)」というサイトがある。
このサイトがどのように運営されているかというと、権利者に「要約していいか」許可を取っているとのこと。
結論から言うと、ご指摘の「flier(フライヤー)」というサイトは著作権法上、問題ありません。というのは、著作権者の許諾をもらっているからです。
このサイトを運営する株式会社フライヤーの苅田明史取締役によると、 「弊社で要約させて頂いている本は100%、出版社や作家本人に連絡して許可を得ています」とのことでした。
つまり本の要約を載せるには許可が必要ということになる。
書籍の図解はどこに通報すればよいか
では書籍の図解はどこに通報すればよいか。
許可を取ってない要約は問題なので、連絡するとしたら権利者となる。
本なので出版社が良いだろう。
問い合わせ窓口から連絡すると良い。
問題になった例
「引用要件を満たさない」と言っても、これまでは解説はスルーされてきた。
しかし引用要件を満たさない解説での逮捕例が最近出始めている。
引用要件を満たさない解説での逮捕例
問題になった例として引用要件を満たさない解説での逮捕がある。
その例がファスト映画だ。
映画やドラマのような映像系の著作物を10分程度の編集して解説したものがファスト映画である。
このファスト映画が著作権法違反として認められたのだ。
映画やドラマの映像を、結末を含めて10分程度に再編集した「ファスト映画」を権利者の許可なくYouTubeにアップロードしたとして、宮城県警と塩釜警察署は6月23日、容疑者3人を著作権法違反の疑いで逮捕した。ファスト映画を巡る摘発は初という。映画やアニメなどの海賊版対策を目的とした社団法人のコンテンツ海外流通促進機構(CODA)が同日に発表した。
ファスト映画の問題点は映像を勝手に利用されているという点の他にもストーリーのネタバレという点もある。
要はストーリーという「中身」を解説されてしまったら、「もう内容知ったから見に行かなくていいや」という人が出てくるので、本来売上で得られた権利を侵害しているということである。
許可を取らずに図解して問題になった例
当たり前だが、著作権を無視して本の内容を公開すると問題になった例もある。
僕の渾身の著書「セールスコピー大全」をパクってたこの、やすしという人から謝罪DMがありました。たぶん、これで全部許されるとおもってんだろうなぁ pic.twitter.com/3KEToeKy9u
— 大橋「セールスコピー大全」「ポチらせる文章術」著者 (@minnano_copy) September 4, 2021
図解許可を取れば問題は無いのか
では図解する許可があれば本を図解しても問題無いのか。
実は必ずしもそうではない。
許可があって図解して問題があるケースに、「出版社の依頼で図解するケース」がある。
まず前提はこうだ。
そこで影響力の強いインフルエンサーに図解依頼をする。
インフルエンサーが書籍の図解ツイートをする。
そう。
ここでインフルエンサーは宣伝の為に図解をしている。
そして宣伝は仕事なので金銭の授受が発生している。
ここで気にしなければいけない点が出てくる。
しかしツイートには「PR」「宣伝」の文言は表記されないので、一般ユーザーはこれが商業ツイートと気づくことができない。
つまりステルスマーケティングとなってしまう。
ステルスマーケティング(英: Stealth Marketing)とは、消費者に広告と明記せずに隠して、非営利の好評価の口コミと装うなどすることで、消費者を欺いてバンドワゴン効果・ウィンザー効果を狙う宣伝手法。
逆転の発想で「図解しているユーザーの本」は図解フリー
図解が問題があるのはわかったが、通報の他に対処法があるのか。
ここで発想を逆転してみる。
「書籍を勝手に図解しているユーザーがいる」
ということは
「図解しているユーザーは自分の著作物が図解されても問題無い」
ということになる。
「本の図解」「図解アカウント」などで検索して出てきたTwitterアカウントのうち、書籍を図解しているタイプは「著作物図解フリーアカウント」と思って良いだろう。
もしnoteやbrainを買ってしまったユーザーがいれば、図解フリー素材として扱おう。
「Twitter 集客のツボ 98」は図解フリー素材
「Twitter 集客のツボ 98」をアフィラさんっぽく図解しました! pic.twitter.com/fRxFoY8fJ1
— しまやす|図解デザイナー (@shi_ma_ya_su) April 2, 2021
「Twitter 集客のツボ 98」は、著者が他の書籍を【忙しい人向け】として図解されているアフィラ氏なので、図解フリー素材と思われる。
まとめ
今回はTwitterで見かける書籍の図解は著作権的に違法なのかについて紹介した。
書籍の図解は著作権法を見ると、引用の要件を満たさず、翻訳権・翻案権として考えても問題がありそう。
真っ当な要約サービスは著作権利者の許可を取って運営しているので、図解しているユーザーが権利者の許可を取っていなければアウト。
書籍の図解の注意点
もし許可を取ってない図解を見つけたら出版社への通報がオススメ。
また図解しているアカウントのは図解されても問題無いはずなので、彼らの著作物は図解フリー素材として扱って良い。
補足
本人談だが「許諾申請はしている」とのこと。
紹介している書籍での学びを図解しているツイートは、事前に出版社様に許諾申請した上で、原著作物の表現を複製・翻案とはならないよう構成、表現に配慮して作成しております。しかし、至らないケースがありましたら、ご連絡頂ければすぐに取り下げさせて頂きます。よろしくお願い致します。
— アフィラ | ビジネス知識を図解でお届け (@afila_zukai) October 25, 2021
他にも著作権関連での通報先や、情報商材に騙されない為の見分け方などの記事もある。
もし気になったら読んでみると役に立つかもしれない。