「嘘みたいなまじめな話をこれからさせていただきたいと思います」
8/4に大阪府の吉村府知事が会見で以下のように発言した。
「ポビドンヨード。代表的なものにイソジンのようなものがありますが、うがい薬を使う観察研究をやってきた。薬事法上、効能を言うわけにはいきませんが、コロナに効くのではないかという研究が出ました」
参考:Yahoo!ニュースhttps://news.yahoo.co.jp/articles/26722f19444ec5ad1cb549084eaf79e7dc0f5ac0
この発言を期に世間ではイソジンの買い占めが多発。
購入者の一部は転売目的で購入しており、メルカリにはイソジンうがい薬が多数出品される事態となっている。
しかしイソジンうがい薬が効果はあるのだろうか。
今回は会見で述べられた研究の内容や、ウイルスとうがい薬の関係から効果を考察してみる。
研究内容
Yahoo!ニュースによると、研究の内容は以下の通り。
発表によれば、府と府立病院機構「大阪はびきの医療センター」が新型コロナウイルスに感染した軽症者を対象に、イソジンで日に4回のうがいをしたグループと、そうでないグループに分けてPCR検査を実施したところ、うがいをしてないグループは4日目にして陽性者が40%だったのに対し、うがいをしたグループは9.5%にまで低下したというのだ。
新型コロナウイルスの感染者を2グループに分けて、片方にイソジンでうがいをさせたところPCR検査の陽性者が40%から9.5%まで減ったとのこと。
研究のツッコミどころ
先程研究の内容を述べたが、この文面からだけでも研究の怪しさがわかる。
主に以下のような点が怪しい。
研究のツッコミどころ
うがい薬は体内に取り込むものではない
前提として、今回の比較実験の対象者は全員が新型コロナウイルス感染者である。
そしてイソジンでうがいをしたグループのPCR検査陽性率が下がったので「コロナに効果があるのでは」としている。
しかしうがい薬は体内に取り込むものではない。
うがいという行為は喉を洗浄する行為である。
喉の表面は洗浄できる、イソジンによって喉の表面のウイルスも減らせるかもしれない。
しかし体内に取り込むこのではない以上、体内のウイルスに効果が及ぶはずがない。
つまり予防には効果はあっても、既にウイルスが体内で増殖した感染者に効果があるわけがない。
PCR検査の精度の低さ
PCR検査の精度の低さも問題だ。
前提として被験者は全員感染者である。
しかしPCR検査の陽性率は40%。
つまり残りの60%は最初から感染者でありながらPCR検査では判定できていないことになる。
なので、イソジンでうがいしたグループのPCR検査陽性率が9.5%まで減少したとしても、治療できたわけではなくPCR検査で判定できる特徴が消えただけで感染は続いているのかも知れない。
そもそもPCR検査は「ウイルスの遺伝子を増幅させて検出する方法」である。
増幅対象として細胞を採取するのだが、どこから採取しているかによって実験の信頼性が大きく変わる。
採取元が喉もしくは唾液だったら、うがいによって表面的な洗浄効果が出ているだけかもしれない。
PCR検査がどのように行われたかは不明だが、これだけでも比較実験の結果だけ見て信じてはいけないことがわかる。
イソジン、買えたら買ったほうがいいのか
ここまでで実験内容の怪しさについて述べた。
感染後にイソジンでうがいをしても効果は無いだろう。
それでもうがい薬である以上、感染前の予防には効果があるはずだ。
では他の人のようにイソジンを大量に買ってきた方が良いのだろうか。
答えは否である。
イソジンを急いで買いに走らなくていい理由は以下の通り。
イソジンを急いで買わなくていい理由
喉だけ守れば良いわけではない
新型コロナウイルスの感染経路は喉に限らない。
粘膜全般が感染経路になるので、目や鼻からも感染する。
最近だと耳からも感染するのではとニュースになっている。
米国で新型コロナウイルス感染症で死亡した患者を解剖した研究チームによると、中耳と、耳の後ろにある「乳様突起」という中空の骨から、ウイルスの陽性反応が出たという。米国の医師会雑誌(JAMA)の耳鼻咽喉科頭頚部外科専門誌に掲載されたと「Newsweek」誌が報じた。
参考:Yahoo!ニュースhttps://news.yahoo.co.jp/articles/20d3d1e96c889974e2061b41f87722a3a8e61726
イソジンを使うことで感染リスクが激減するならまだしも、イソジンで喉だけ守っても結局は鼻や目や耳からの感染リスクは残っている。
期待できる効果が高くない以上、急いで買いに言ったり、転売されているものをわざわざ買う必要は無い。
他人の目を気にする類のアイテムではない
イソジンを急いで買う必要が無いもう一つの理由は「他人の目を気にする類のアイテムではない」ということだ。
イソジン不足とマスク不足では事情が異なる。
マスクの場合は、予防の他にも、マスクをつけずに外出すると他者から白い目で見られるという問題があった。
しかしイソジンの場合は屋内で使うものなので他人の目を気にする必要は無い。
もし入手できなかったとしても、普通にうがいはできるし、イソジンでうがいしなかったからといって外で批判されるわけでもない。
故に余程予防に力を入れたい人を除けば、イソジンを急いで買う必要は無い。
コロナ対策にイソジンうがい薬は効果はあるのか まとめ
コロナ対策にイソジンうがい薬は効果はあるのか。
結論は、飲み薬やワクチンじゃないんだから感染後の体内のウイルスを殺す効果は無い。
ただし予防としては効果があるかもしれないが、劇的な効果を見込めるわけでもないので、転売されているものを急いで買う必要は無い。