「エスカレーターでは立ち止まる」は鉄道会社の身勝手である。
最近は鉄道会社が「みんなで手すりにつかまろうキャンペーン」と銘打って片側空けをやめさせようとしている。
「歩行を想定していない」など理屈を並べてはいるが、一方的な側面だけを捉えており、乗客側の理屈や設備の不備など不都合な面からは目を背けている。
ここで一度、不都合な側面について考えてみる。
問題
問題となっているのは、エスカレーター利用時の片側空けのルール。
関東と関西で空ける側が違ったりはするが、片側をエスカレーターを歩行する人のために空けるルールだ。
しかし鉄道会社は「片側を歩行することは故障に繋がる」として「みんなで手すりにつかまろうキャンペーン」などと銘打ってこのルールを無くそうとしている。
エレベーターやエスカレーターなど昇降機関連の業界団体である日本エレベーター協会によると、エスカレーターは元来歩行することを前提に造られていないという。そのため、大勢の人が足早に通行すると故障の原因にもなると指摘している。
「エスカレーターのマナー」問題に、鉄道会社がマジになってるワケ
一見するともっともな理由ではあるが、ここには鉄道会社が触れない不都合な側面が存在する。
鉄道会社が触れない「不都合な側面」
鉄道会社が触れない「不都合な側面」で大きなものは以下の通り。
- 片側を空けるルールは乗客のマナーの良さから生まれたもの
- 片側を空けないで得をするのは鉄道会社
- 駅の構造上の不備
片側を空けるルールは乗客のマナーの良さから生まれたもの
「片側を空ける」というルールは、「急いでいる人は先に行って良い」という乗客の譲り合いの精神から生まれている。
皆が自分勝手であれば、自分が快適にエスカレーターを利用できれば良いので、片側を空けることもなく誰も自分の前には行かさないだろう。
要するに「片側を空ける」というルールは良きマナーから生まれた良きルールなのである。
ちなみに欧米でも「walk left, stand right」のように「片側を空ける」のは一般的である。
片側を空けないで得をするのは鉄道会社
では何故「片側を空ける」良きルールを撤廃したいかというと、鉄道会社の得につながるからである。
- 先に述べたように、エスカレーターの片側を空けて片側を歩行されるとエスカレーターの故障に繋がる。
- 故障したエスカレーターは修理しなければならない。
- 修理には費用がかかる。
- 費用は鉄道会社にかかってくる
つまりエスカレーターの片側を歩行するのをやめさせると、鉄道会社の負担が減るのである。
従って「みんなで手すりにつかまろうキャンペーン」は乗客みんなのためではなく鉄道会社の利益のためということだ。
駅の構造上の不備
乗客側としても別に駅に迷惑をかけたいわけではない。
しかし駅の構造上の理由からエスカレーターの片側を歩行せざるを得ない状況になっている。
その「駅の構造上の理由」とは「プラットホームに階段が無い」ことである。
もう少し細かく言えば「エスカレーターの横に階段が併設されてない」ので、エスカレーターの片側を歩行せざるを得ないのである。
電車が発着するプラットホームの大きさは駅によって様々であり、中にはプラットホームが狭い駅も存在する。
プラットホームが狭い場合、エスカレーターの横に階段を併設できず、エスカレーターと階段が離れて設置されることになる。
乗客の心理からすると、急いでいる状態で自分の降りたドアの側にエスカレーターしか無い場合、わざわざ遠くの階段まで移動して上がろうとは思わない。エスカレーターを歩行できるならエスカレータの片側を歩行するだろう。
もし駅のプラットホームが十分に大きく、エスカレーターと階段を併設できるのならばエスカレーターの片側を空けずに急ぎの人間は階段を使うということもできるだろう。
しかし駅のプラットホームを狭く作られているせいでエスカレーターの片側を歩行せざるを得ないのである。
極端に言えば駅を狭く作った鉄道会社が悪い。
ではどうすればよいか
「みんなで手すりにつかまろうキャンペーン」では鉄道会社の都合を守るだけで根本原因は解決できない。
根本原因を解決するには、エスカレーターの片側を歩行せざるを得ない駅の構造を見直す必要がある。
もっと言えば、駅に十分なスペースを割けないのは都市計画に原因があり、利用客数に見合った適切な計画を行政と鉄道会社がしなければならない。
または片側を歩行しても故障しないエスカレーターを開発するのも良いだろう。
まとめ
- 「みんなで手すりにつかまろうキャンペーン」は鉄道会社の都合でしかない
- エスカレーターの片側を歩行しないようにするにはプラットホームに階段を併設するスペースが必要
- 手すりにつかまらせるよりも駅の構造見直しが必要